ライターとしてお仕事を受ける中で、自分が誤って使っていた日本語や回りくどい表現に気付かされることが多々あります。
記事を納品し、校正者の方からの指摘を見直しながら学ぶのは大切ですが、人任せではなく自ら学びとっていかなければ良いライターにはなれない!
そう考え、ライティングに役立つ文章力や言葉遣いに関する本の中から、気になるものを順に読んでいます。
今回は、唐木元(からき げん)さんの著書『新しい文章力の教室』をご紹介します。
文章を作成するお仕事に就いている方でなくても勉強になる内容ですので、興味を持っていただけたらうれしいです✨
スポンサーリンク『新しい文章力の教室』
『新しい文章力の教室』は、2015年8月11日に初版が発行され、多くのライターやブロガーから支持されている本です。
記事執筆にはもちろん、メールのやり取りや企画書、報告書、論文など、文章が必要となるあらゆる場面に役立つ文章力UPのポイントが示されています。
「大人のための国語教科書だ!」
私はこう感じました。
例えば、本書にはこのような例文が示され、述語の誤った使い方について解説されています。
彼はギターもベースもドラムも弾けるマルチプレイヤーです。
『新しい文章力の教科書』より
おそらく会話なら聞き流してしまう表現ですし、楽器に興味がない方は違和感を感じにくいかもしれません。
でも、ドラムは「弾く」のではなく「たたく」が正しいですよね。
述語をまとめると文章がすっきりしますが、楽器という共通点はあっても演奏の仕方によってふさわしい述語は異なります。
彼はギターもベースも弾けるし、ドラムもたたけるマルチプレイヤーです。
彼はギターもベースもドラムもたしなむマルチプレイヤーです。
こうすることで、述語が3つの楽器と嚙み合います。
考えれば当たり前のことですし、小学校、中学校で主語・述語・目的語の勉強はしてきたはずです。
ですが、知らない合間に「使い方としては間違っているけれど意味の通じる日本語」を違和感なく使っている方は多いのではないでしょうか?
慣れによって正しい使い方を忘れてしまった大人たちに、改めて国語の授業を開いてくれている『新しい文章力の教室』は、文章の基本を改めて大切に思うきっかけを与えてくれる本です。
『新しい文章力の教室』著者・唐木元さんとは
著者の唐木元(からき げん)さんは、ポップカルチャーのニュースサイト「ナタリー」で7年にわたりマンガと物販サイトの編集長を務め、新人研修を請け負ってきた方です。
大学在学中よりライターとしての活動を始め、卒業後は事務所開設、3つの出版社(ライブドア・パブリッシング・幻冬舎・KI & Company)の編集者を務められました。
その後、株式会社ナターシャで編集長としてご活躍後、現在は取締役をされています。
ナタリーがどんなサイトなのか気になりますよね
公式サイトはこちらです↓
音楽・お笑い・映画・コミックと幅広いジャンルを扱っているメディアで、それぞれの記事は数分もかけず内容が把握できるシンプルな構成になっています。
この編集部で、「唐木ゼミ」と呼ばれる新人社員向けのトレーニングを行っていた唐木さんが導き出した伝わる文章を書くためのメソッドを1冊にまとめたのが、『新しい文章力の教室』です。
唐木ゼミで多くの新人の「遅い」「まとまらない」「伝わらない」という悩みを解決してきたノウハウが、誰でも順を追って理解できるよう丁寧に解説されています。
サブタイトルの「苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング」というキャッチフレーズも、印象的で興味をそそられますね。
『新しい文章力の教室』|全5章からなる本書の内容を解説
『新しい文章力の教室』は、全5章から成ります。
文章の受け取り手が負担を感じず完読できる文章に必要な要素が、例文とともに解説されています。
各章について、詳しく見ていきましょう。
【第1章】書く前に準備する
「書く前の準備で文章が決まる」
第1章では、「構造シート」と呼ばれる文章の主眼(テーマ)と骨子(主眼を達成するための骨組み)を明確にするためのメモを使った文章の構成の仕方について、詳しく記載されています。
「良い文章とは完読される文章のこと」
これが、この本全体を通して大きなテーマとなっています。
Webライターにとって、自分が書いた記事を完読してもらうことは重要な目標です。
読者は内容が不十分なら離脱して他の記事を検索しますし、網羅性があっても不必要な言葉が間に挟まって長すぎると、途中で読む気が失せ完読できません。
読み手に必要な情報を徹底的にリサーチし不足なく伝えるためは、「事実」「ロジック(論理)」「言葉遣い」の3つをピラミッドのように順に積み上げることが大切です。
事実があってもロジックが破綻していれば説明が付きませんし、言葉巧みでも事実が捻じ曲げられた嘘の情報は当然受け入れられません。
正しく、わかりやすく、欲しい情報を確実に読者に手渡すために、書きたいパーツを箇条書きなどで揃え「プラモデル化」し、主眼と骨子を立て「構造的記述」を行うことで、過不足ない文章ができあがるのです。
その過程では、不必要な情報を捨てる覚悟も必要。
情報を取捨選択しながら、完食されるラーメンのような何度読んでもくどさのない文章を作成することが、ライターには求められるのです。
【第2章】読み返して直す
完読される文章を目指すためには、何度も読み返して推敲することが欠かせません。
推敲の見地として、以下の3つが挙げられています。
まず、黙読によって誤字脱字や表現・文法の間違い、主眼と骨子が嚙み合っているかを確認します。
次に同じ黙読でも視点を変え、同じ言葉の連続や別の単語と見間違えるような箇所、漢字とひらがなのバランスを確認。
最後に音読で語呂を確かめ、リズムがよく読み進めやすいかをチェックして推敲が完了します。
そして、文章ごとに確認した後、必ず冒頭から読み直すことが大切です。
【第3章】もっと明快に
「完読されるために目指すべきは、適切な長さの文章、適度に締められた文章」
読者が負担なく完読できる文章には、主眼と骨子が揃っていること、話題と論旨が明確であることが欠かせません。
読者によってちょうどよい文章について、唐木さんは「肥満でも痩せすぎでも魅力的に映らないのと同じ」と表現されています。
無駄のない程よい肉づきの文章が、読者からは支持されるのです。
読者に頭を使わせない、読みながら疲れさせない文章を書くには、余計な言葉が挟まらず、それぞれの言葉がどこに結びつくのか、何と並べて説明されているのかなどが明確であることが重要です。
【第4章】もっとスムーズに
「適切なスピード感の文章」
完読される文章に必要なスピード感は、「情報量÷文字数」で割り出されます。
まったく同じことを伝える場合、文字数が少ない方がよりスピーディーに伝わる、これが「スピード感のある文章」の基準です。
ただ、文字数を少なくすればスピード感が増し完読につながるというわけではありません。
文末のバリエーションを増やそうとして多用しがちな体言止めは、文末を省略することで現在・過去、能動・受動といった判断を読者に委ね、負担を強いることになりかねません。
指示語や「こと」「もの」も、同じ言葉の繰り返しを避けるために使いたくなりますが、「この指示語は先の○○を表しているのかな?」などと読者が推測しなければならず、完読前に疲れてしまう原因になります。
スムーズに読める文章は、推しはかる必要なくスルッと頭の中に入ってくる文章なのです。
【第5章】読んでもらう工夫
仕事の基本にも通ずる「ものごとを伝える工夫」
最終章には、文章を書くということに限らず、社会人として、人と関わりながら生きる人間として、何かを伝える際に大切なことが書かれています。
コミュニケーションを円滑にするために必要な要素も多く含まれています。
具体的な例を出したり、主観を押し付けず冷静に発言するのは、会話やメールのやり取りといった日常でも必要なことです。
また、「同意」と「深堀」は、会話を弾ませるためのテクニックとしても重宝するでしょう。
『新しい文章力の教室』をご紹介しました
そして最後に、「すべてのルールは絶対ではない」という言葉があります。
伝わりやすく、完読されやすい文章を書くためのさまざまなルールが全5章で解説されていますが、時にルールより「完読」が優先されることがあります。
確固たる狙いや意図がある場合、ルールを超えて伝えることに集中し、ルールを柔軟に使いこなすことが必要なのです。
大切なのは読み手に伝わることであり、それをはかる指標が「完読」である。
この本に書かれていることは、ライターとして活動していくうえで身につけるべきことばかりです。
しかし本書から読み取れる本当のメッセージは、ただルールに従って型どおりの文章を作れば立派なライターになれる、というものではないと感じます。
基本をおさえつつ、常に読者目線を意識しながら執筆することが重要。
いちばん大切な部分を忘れず、読者がストレスなく完読できることをいちばんに考えた文章を書き続けられえるよう、繰り返しこれからも読み続けようと思います。
メールや報告書、SNS・・・文章に触れずに生きていける人はいないはずです。
執筆業であるライターやブロガー以外の方にも、ぜひ一度読んでいただきたいおすすめの本です✨
ご清覧ありがとうございました♬
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