ピアノは、持ち運べない楽器。
その場所にある、その楽器を弾かなければいけません。
自分の楽器を使って常に演奏する管楽器や弦楽器の方からは
「どんな楽器にあたるかわからないのに、大変だよね・・・」
と言われることもあるけれど、
正直毎回出して組み立てて、演奏し終わったらきれいに掃除してケースに締まっている皆さんの方がよっぽど大変だと思います💦
ただ、だからといってピアノは放置しても大丈夫なわけではありません。
自分でできることは限られていますが、もっと大切にしてあげて~と思うかわいそうなピアノに出会ったことも多々あります。
もし、ピアノの置かれた施設などにお勤めの方が読んでくださったら、一度ピアノを確認してあげて欲しいなぁと思って今回はお話していきます
置きっぱなし・飾りピアノたち
年1回の調律はマスト!
移動を頻繁にする場合や温度変化の激しいお部屋に置くピアノは、調律の頻度も多くなります。
ですが、コンサートホールでない限り、楽器の管理にそれぼど気を配れないこともよくわかる
今まで色々な場所で演奏させていただきましたが、演奏前や音を出してから、「あらまぁ💦」と思った印象的なピアノがいくつかあります。
まるで玉手箱なピアノ
数年前まで、地元のイオンで毎週1回ミニコンサートをさせていただいていました。
白い素敵なピアノで、選曲も自由に楽しませていただいていましたが、音楽に興味がない担当さんへと変わってしまい、残念ながらミニコンサートも廃止されることに
その素敵な白いピアノ、自分で屋根を開けてセッティングするのですが・・・
玉手箱を開けたようにもゎゎゎ~っと埃が舞うのです(笑)
コンサート時以外は通路に追いやられているので、1週間空くだけでも結構な埃。
数週間相手の演奏の時など、覚悟して開けないとむせかえるレベルでした。
楽器というより道具的な扱い。
ショッピングモールの備品の一部なので仕方ないのかなぁとも思いましたが、なんだか切なくなりました
宇宙を体感させてくれるピアノ
学校の体育館にあるピアノ。
学校の楽器なので年1の調律はしっかり行われているそうですが、コンサートに合わせてというわけにはいかず、私が演奏するときにはかなり狂っていることもありました。
体育館って埃もすごいし、温度・湿度の変化も激しい。
置きっぱなしで良い状態を保つことは不可能です。
でも、ピアノの保管庫のある学校なんてほぼないだろうし・・・
リハーサルで弾き始めると「あれ?間違えた?」「ん?また変な音弾いた?」
確認すると、音程が狂ってしまっていて、鍵盤を右から左へ順番になぞっていくと、まるで宇宙の音を聴いているような気分に(笑)
これも仕方ない。
ピアノを行事で使うたびに舞台へ上げたり下ろしたり、先生方も苦労されているから
傷だらけのピアノ
「ピアノが汚い。演奏するのに磨きもしないのか」
コンクールだったか、発表会だったか、観客からクレームが入る事態に居合わせたことがあります。
確かに手の跡が目立った位置についていましたが、それ以上にピアノを汚く見せていたのは無数の傷。
ホールで保管されているピアノにしては、随分ひどい状態でした。
移動させたり多くの人が触れるので、細かな傷が増えていくのは当然です。
でも、これは管理が杜撰だなと一発でわかるピアノに出会うと切なくなります
自分の楽器だったら、絶対にそんな扱いはしないでしょう・・・
舞台で弾くことを楽しみにしている人、奏でられる音色を楽しみにしている人のためにも、管理する側にも最低限の配慮はしていただけるといいのかなと感じます。
ピカピカのピアノはテンションが上がる!
古い新しいの問題ではなく、ピカピカに磨かれたピアノは見ていてとても気持ちのいいもの
大切にされているのがわかる楽器を前にすると、より丁寧に演奏したいと思えるものです。
私が講師をしている楽器店のピアノは、スタッフさんが毎日磨いてくれています。
ピアノクリーナーは、付けすぎるとなかなか跡が消えません
「クリーナーをタップリ使って拭いてくれたんだなぁ。」
とわかるほど、白い跡だらけになっている時も(笑)
でも、それはそれでうれしいのです
漆黒のボディに惚れ惚れ
先日、コンクールの録音のために使わせていただいたホールのピアノ。
おそらくとても新しいもので、音は若干不安定。
でも、傷一つない漆黒のピアノは、本当に美しかった✨
自分の部屋の鏡よりきれいに顔が映りました
弦も響板もきらっきらして、思わず写真をパシャリ。
これからたくさんの人がこのピアノに触って、素敵な音に育っていくんだろうなぁ。
どうか大切に扱ってもらえますように、そう思って演奏しました🎵
年季の入ったピアノも味わい深い
傷は付くもの。
施設のピアノは、たくさんの演奏によってより響く、より美しい音へと変化していきます。
傷がたくさんあっても、大切にされながら、メンテナンスもきちんと受けながら歳を重ねたピアノは味わい深いんです。
「汚い」「古い」
とは感じなくて
「味がある」「年季が入っている」
そうわかる。
同じピアノを、国内外で活躍するピアニストさんが弾いていることだってあります。
それを実際に自分が客席で観ていたこともある。
「あぁ、あの時〇〇さんが演奏したピアノを弾いているんだ」
長く愛されながら、有名アーティスト達が演奏することもあるピアノ。
他の楽器で、プロが演奏した楽器を触れる機会はほとんどありません。
ピアノの特権ですね
ピアノの保管事情のお話でした
自分の楽器を基本持ち運べないピアニストは、ホールで出会うピアノを演奏するしかありません。
メーカー指定や自分のピアノとともに演奏して回るピアニストは、ほんの一握り。
いや、ひとつまみ。
子どもから大人まで、たくさんの人が触れる機会のある施設備え付けのピアノ。
誰が演奏しても
「いい音だったよ~ありがとう」
そう思えるように、道具ではなく多くの演奏家を魅了する楽器として、大切に保管していただけたらうれしいといつも思っています。
ご清覧ありがとうございました♬
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